Dripping of memories

君の十字架

※ヤオイ要素が強くなっているので苦手な方は読むのはご遠慮ください。

No09:約束

「何を怒っているのですか?メロ」

髪の毛をくるくるといじりながら調査関連の書類を読んでいるニアの目の前に、手足を鉄の椅子にきつく縛られ、全く身動きが取れない状態のメロがいた。

側にいたリドナーがメロに板チョコを銜えさせると、すぐにその板チョコをバキッと噛み砕き、口に入りきらない割れたチョコがバラバラと口元からこぼれ落ちた。

「…ニア…貴様!」

噛みつくような勢いで顔だけ前につきだし、鋭い目をニアに向けながら怒りをあらわにした。
しばらく沈黙が続き、リドナーは少し困った顔をしながら二人のいる部屋を後にした。

「前に言ってたじゃないですか」
「…なに?」

「私に、もう少し優しく、話も聞いてやると言ってたじゃないですか」
「記憶に無い」

「言いました」
「そんな事はどうでもいい…お前、何がしたいんだ?」

「メロと一緒にいたいみたいです」
「お前と遊んでいるヒマは無い!」

「少し黙っていてくれませんか、この事件だけ先に解決させなくてはなりませんので」
「俺を解放してから好きなだけLとしての仕事をこなせば良いだろう、俺を何処まで侮辱するつもりだ…」

メロの言葉を無視してニアは、部屋中にあるモンター映像を眺め、大量の資料を読み、作りかけのダイスタワーをすすめたり、寝転がって飛行機で遊んだりしている。水のように流れてゆく時間を、ニアと二人で過ごす。
身動きをとることも許されず、ただただ過ぎていくだけ。

「…最悪だ…」

そう小さく呟いたメロは項垂れた。
こんなはずでは…マットは今頃どうしてる…。

ふと、ニアはゆっくりと立ち上がりメロの頬をその手で包み込んだ。顔を覗き込み、その唇は唇を求めて来た。前に一度それを許したが、今は許せる気持ちにもなれない。その唇に噛みつくと、痛みを感じたニアは、一瞬顔を歪めたが、唇から血を流しながら、再び唇を重ねた。

「ん…」

無理矢理に口内に侵入してくる舌を噛みきってやろうかと思いながらも、それはさすがにできず、血の味を感じながら、吸い付くその唇を許していた。

「…やめ」

顔を左右に動かして離れようとしても、小さなその手に包まれてしまう、曖昧な拒否は伝わらない。
唇からやっと離れると、顔の火傷の痕を優しくなぞるように舐められる。

「やめろ…くすぐったい…」
「私と一緒にいれば、こんな傷を負う事は無かった」

「はっ、お前に頼るなんて、ごめんだな…」
「違います、メロが必要なんです」

火傷の痕を辿りながら首筋までいき、そこに吸い付いた、強く。

「…ッ!」

何度も繰り返され、そこには複数の痕が残った。
ニアは、メロを縛っていた縄を全て解くと、一歩下がり、うつむきながら、その場に座り込んだ。

「もう、大丈夫です」

小さい声でそう言うニアを横目に、メロは椅子から立ち上がると服を着なおし、軽く髪を手ですいた後に、何も言わずに部屋の出口に向かって行った。

「メロ…メロ、それが消える頃に、また、会いたい…会いに来て欲しい…」

その言葉に思わず立ち止まり少し黙っていると、後ろから小さな手がのびてきて自分の腰に手を回された。
その手にはIDカードが握られており、それをメロのズボンに挟むと、静かに離れた。

「それがあれば、ここへ入れます…」

ズボンに挟まれたIDカードを手に取り、そのまま地面に落とした。

「こんなものはいらない。」

IDカードが落ちた音が、部屋に静かに響く。
振り返らずにメロは話を続けた。

「お前はLだ、他人に隙を見せてどうする?俺に会いたいなら、そう連絡すればいいだろう。」
「…はい、そうですね」

そのままメロは出口に向かい、扉の目の前で止まった。

「俺は、もうお前から逃げない。それだけは約束してやる」
「メロ…じゃあ明日…」

「毎日会いたいとかは無しだ、多くても1ヶ月に1回にしろ」

そう言い残してメロは部屋を後にした。
静まり返る部屋の中で、ニアは何処か幸せそうにしながら自分の唇にそっと手をあてた。

「約束です…」

...To be continued

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